デザイナーの頭の中をのぞく〜祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ〜

紙のデザインは大学時代にたしなむ程度だったふもぱん先生(他称)です。

日比谷図書文化館で開催されている『祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ(←誤字ではない)』に行ってきました。用事で新橋方面へ行く機会があったので、約束の前に滑り込みした次第です。

ひとくせあるブックデザインの数々

ブックデザインに関心のある方なら、その名を知っている方も多いであろう祖父江慎さん。ひとくせあるデザインが特徴です。

マンガで言えば、吉田戦車の『伝染るんです。』(1990年)や、

小説で言えば、京極夏彦『どすこい(仮)』(2000年)、

最近では、新装版の夏目漱石『心』(2014年)など、相当数の本を手がけていらっしゃいます。


上記『心』にいたっては、Amazon だとタイトルに「(祖父江慎ブックデザイン)」とわざわざ入っているほどですね。

先にあげた『伝染るんです。』も『どすこい(仮)』も、古書店や書店で手にとった記憶があります。

本のジャケ買い

本屋さんに行くと、興味がなくてもふと手に取りたくなる本はないでしょうか? 私は「本のジャケ買い」をしてしまいそうになることがあるのですが、「あ、この本いいな。」と手にとって、装丁を担当者した人の名前を見ると、「あ、またあの人だ。」となることがしばしばあります。

本の表紙デザインはもちろん、紙の質感や形など、見ているだけで伝わってくる、不思議な魅力が本にはあります。パッと見て、触ってみたい、と思わせる本に出会うと、「目にも触覚があるな」と感じます。感覚的に手に取りたくなる本は、だいたい中身の印象もいいですね。

デザイナーのデザイン指定

今回の展示は、祖父江慎さんの作品が並べられていると同時に(残念ながらほとんど手にとることはできませんが)、デザインやレイアウトに施されるデザイン指定の一端が垣間見えます。展示は撮影NGなので、ちかしいイメージとしては以下のようなもの。

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雑誌『 Typography 』( Issue 08 )の一部ですが、どこをどう調整しているか、の例です。小さい「ッ」や「ァ」、「ー」のサイズ感を微妙に調整していることがわかりますね。

その他、「、」や「。」、カッコなどのいわゆる約物だけフォントやサイズを変えたり、漢字とひらがなで差をつけたり、普通の人が見たら「こんなことしてるの!」というような、細かすぎて伝わらない(かもしれない)調整の事例が取り上げられています。

個人的には、同じフォントでも、漢字によっては前後のバランスを見て大きさを調整している、というのが新発見でした。そこまでは目が行き届いていなかった…のですが、よくよく見れば、違和感を覚えうる部分ですね。

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・・といったデザイン指定を垣間見れるのが、『祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ』です。

展示で登場するブックデザイン(一部)

恩田陸『ユージニア』(単行本版)では、本文がわずかに1度傾いており、一番右の行と一番左の行とで、一行の文字数が違います。不安定な作品の世界観を表現しているようです。

次は新潮社から出ている『悪趣味百貨』。こちらは字にしてお伝えするのはどうも抵抗があるのですが、本文の中で「う」と「ん」と「こ」だけが、他の文字と違うテイストになっているのです(お察しください)。この結果どうなるかはご想像通りかもしれませんが、この3文字だけ浮き上がってみえるのです(お察しください)。もはや気が散って本文が読めません。こちらは中身をご紹介しかねるので、どうしても気になる方は書店か本展覧会へ。

あとは冒頭でもご紹介した新装版の夏目漱石『心』ですね。

内容紹介によると、

『心(こころ)』刊行百年を記念し、ブックデザインの第一人者にして自他ともに認める熱烈な漱石本ウォッチャーの祖父江慎が手掛ける新装版。漱石自筆の原稿と装画に立ち返り、デザインから裸の漱石に迫る! 歴史的かなづかいを読みやすい書体で組み、緻密な工夫と遊び心いっぱい。モノとしての本の魅力溢れる一冊。

とあります。力、入ってそうですね。

ちなみに祖父江さんの事務所には、漱石の『坊っちゃん』が新旧500冊以上あるそうです。時代や出版社の違いから文字組みの変遷を研究されているそう。

ノンブル(ページ数の表記部分)には、漱石自筆の文字を拾って使うなど、細かい工夫がたまりません。この『心』に関しては、冒頭の『 Typography 』( Issue 08 )で特集もされており、祖父江さんの意図が詳細に紹介されています。気になる方はこちらを読まれるのもよいです。

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チラシにも見られる細かいネタ

細かい工夫は、展覧会のチラシにもちょいちょい見られます。

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会期日程の「一月二三日」に「イチ、二、サン」とルビがふってあったり(読めるがな…でも1・2・3っていう並びはいいよね的な)、「二月一四日」には「ヴァレンタインデー」、「二月一六日」には「天気図記念日」とルビがふってあったりします。別になくてもいい情報ですが、遊び心を感じますね。

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「日比谷図書文化館 特別展」の文字も順当に考えればまっすぐ置くところでしょうが、微妙に傾いています。割りと小さい文字ですが、これだけでもちょっとした存在感が出ます。

まとめ

あれこれ書いてきましたが、展示自体は小規模で2フロアほどです(入館料300円)。ちょっと興味がある人におすすめ、というよりは、既に祖父江慎さんという人が好きな人、ブックデザインが好きな人向きと言えます。

会場の日比谷図書文化館は文字通り図書館なわけですが、図書館の2階(パープルゾーンというエリア)には関連展示が少しあります。展示の本は手に取れませんので、(ほんの一部だけですが)手にとってみたい方は図書館にも立ち寄ってみるのもありです。

◉ 会期
2016年1月23日(土)~3月23日(水) ※2月15日(月)展示替え
 前期「cozf編」:1月23日(土)~2月14日(日)
 後期「 ish編」:2月16日(火)~3月23日(水)
(休館日:2月15日(月)、3月21日(月・祝))

◉ 会場
日比谷図書文化館
千代田区日比谷公園1番4号
1階 特別展示室

◉ 開室時間
平日 10:00~20:00、土曜 10:00~19:00、日・祝 10:00~17:00

◉ 観覧料
一般300円、大学・高校生200円、千代田区民・中学生以下、障害者手帳をお持ちの方および付き添いの方1名は無料

ちなみに

※御詫び
この度、ご来場のお客様への配布用小冊子の製作が遅れ、配布が間に合わない事態となりました。
展示解説書の配布開始は2月10日(水)を予定しております。

とのことなので、気になる方はご注意を。

日比谷遠いしな〜という方で、今回のような内容が気になる方は以下の本がおすすめ。フォントの歴史や選び方、ブランディングの話が簡潔にまとめられています。

おまけ:プロントで《まい泉》のかつサンドを

会場と同じフロアには《ライブラリーダイニング日比谷 プロント×まい泉》があります。《まい泉》は、あのトンカツの《まい泉》です。不思議な組み合わせですね。売り切れていなければ、かつサンドが頼めますぞ。

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細かいこだわりの研究は計画的に。

祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ(日比谷図書文化館)

WebディレクターにおすすめのPodCast 3選

フリーランスなので家事をしつつ PodCast を聴くのが習慣になっているふもぱん先生(他称)です。

「耳学習」というのは便利なもので、両手がふさがっていても聞けますし、歩いていても聴ける、というのが大きなメリットです。私は家事をしているときや移動中、散歩中によく PodCast を聴いては「ほぅ」と脳内でうなずいております。アイデアは歩いていると生まれやすい、などと言われますが、「散歩×PodCast」は新たな考えが浮かぶヒントになるのでおすすめです。

実は幅広いジャンルのものを聴いているのですが、今回は仕事に絡めて「Webディレクター向け」という切り口で厳選したもの3つご紹介します。

  1. Automagic Podcast(Web全般・デザイン・制作系)
  2. AccSell — Accessibility Central(アクセシビリティ系)
  3. Rebuild(エンジニア系)

多彩なゲストが毎回登場する「 Automagic Podcast 」

真っ先にご紹介するのは長谷川恭久さんが配信されている「 Automagic 」。長谷川さんはセミナーにもよく登壇されていますので、同業の方ならご存知の方も多いでしょうか。

毎回Web業界の多彩なゲストが登場され、長谷川さんとトークする形式で進みます。内容はデザインや制作、その周辺にまつわるお話がメインです。時間は会により様々ですが、1〜2時間くらいが多いでしょうか。ゲストはセミナーにも登壇されるような方が登場されることも多いため、「いそがしくてWeb系のセミナーに行けない…」という方は必聴です。

何よりすごいと思うのは、継続されている、ということ(そこかい、というツッコミもありそうですが)。PodCast は、途中から更新されなくなるものが珍しくないのですが、Automagic さんはだいぶ前から聴かせていただいています。長谷川さんというフィルターを通してずっと聴いているためか、軸がぶれないのがいいのかもしれませんね。

Automagic Podcast

アクセシビリティに特化した「 AccSell(アクセル)」

こちらはアクセシビリティというジャンルに特化しているため、実にわかりやすい PodCast です。反面、興味がないとつらいかもしれませんが、Webディレクターたるもの、幅広いジャンルをカバーしておきましょう。本で読むのが大変でも、耳で聴くなら入りやすいですよ。我々はいつかおじいちゃん、おばあちゃんになり、自然と不自由なことが増えてくるはず。将来の自分たちのためにも理解を深めておきましょう(言うは易し、なのですが)。

メインパーソナリティの中根雅文さん、植木真さん、アシスタントの山本和泉さんの3人がトークする形式です。中根雅文さんは全盲の方で、お話にこの上ないリアリティがあります。Web業界の一部では軽く名物感がありますが、植木真さんの「芸」もいいスパイスになっております。時間は30分〜1時間くらいのものが多いですね。

こちらの PodCast は、昨年末の「 CSS Nite Shift9 」ではじめて知りました。聴き始めてまだ日は浅いのですが、過去の収録にさかのぼって定期的に聴いています。

AccSell

エンジニアたちの会話に聞き耳をたてる…「 Rebuild 」

シックス・アパートやクックパッドに在籍されていたエンジニアである宮川達彦さんが、毎回1〜2名のゲストとトークを展開するテック系 PodCast 。エンジニアの方が中心で、実を言うと100%理解できていませんが、そこはWebディレクターたるもの、幅広いジャンルをカバーしておきましょう(2回目)。

私はせいぜい HTML、CSS、JavaScriptちょこっと、くらいのレベル感でしかコンピューターと対話できませんので、たまに何が話されているのかさっぱりわからないこともあります。ただ、仕事柄エンジニアの方と会話することもあるので、わからないなりに耳を慣らす意味でも聴いております(聞き慣れない横文字が出てくるとググります)。

ゲストには元はてなの伊藤直也さんや元Appleや元Googleのエンジニアの方など、普段あまりお話を聴く機会がないであろう方が登場されます。時間は30分〜1時間半くらいが多いでしょうか。

Rebuild

まとめ

上記以外にも複数聴いているのですが、あえて3つだけ選ぶなら…と仮定してチョイスしました。PodCastを聴く習慣がない、というWebディレクター各位はおためしあれ。打合せの移動中などにいいですよ。

そういえば、最近リクルートの Media Technology Labs が運営する「 POSTD 〜プログラミングするエンジニアに向けたトレンドメディア〜 」でも PodCast が始まったようです。こちらも聴いてみます。

POSTD Podcast

ところで耳栓型のワイヤレスイヤホンがほしい

ちなみにこの関連で気になるガジェットが、耳栓型のワイヤレスイヤホン『 EARIN 』。

今は有線のイヤホン(iPhone付属のもの)で聴いているのですが、やはり線がプラプラしていると邪魔になることが多いのです。音質はそこそこのようですが、幸い PodCast を聴くくらいなら気にならないでしょうし、ひかれています。ちょっとお高いのですが…。

耳学習も計画的に。

PHP 5.4から5.6のアップデートでWordPressへの影響は見られず

お客さまのサーバーで PHP のアップデートがある、ということで WordPress への影響を少し心配していたふもぱん先生(他称)です。

昨年、ノーマルなサイトをWordPress化した案件がありました。今回、そちらのサーバーで PHP のアップデート( PHP 5.4 から PHP5.6.17 )があるということで、念のため事前に調査を実施。ですが、何か影響が出るという事例は見つけられませんでした。英語で「 WordPress 4.0 では問題なかったよ」という情報が1つ見つかった程度。

WordPress 4.3.1ではPHPのバージョンアップによる影響なし

結論としては、「影響なし」だったのですが、私のように気になる人が世界のどこかで検索されるかもしれませんので、ここに記します。

PHPのバージョンアップ:PHP 5.4 → PHP5.6.17
WordPressのバージョン:WordPress 4.3.1
※WordPressは4.4.1が最新でしたが、諸般の事情によりまだアップデートしていない状態

以上、ですが、あまりにも簡潔なブログなので、少しつぶやきを。

WordPressはメンテナンスコストがかかる

ここ2〜3年くらいは、本当に WordPress の案件が多く、お客さまからも「 WordPress でお願いします」と言われることが珍しくありません。

コストを重視すると、たしかに WordPress は優秀です。が、その後のアップデートの対応などを考えると、大きなサイトほど慎重さを要すなぁ、と思う今日このごろです。

実際、古いバージョンの WordPress で「乗っ取り」を受けているサイトも過去にありました。WordPress は世界的に利用されているため、同時に悪い人たちにも狙われやすいのです。バージョンアップを放置しすぎると、最新版とのギャップが大きくなりすぎて、安易にバージョンアップできません。事前にテストサーバーを用意して検証してみる、などの対応が必要です。

また、WordPress 本体はそう簡単に消滅しないはずですが、WordPress 内で使うプラグインは個人が開発しているものも珍しくありません。それらのサポートなりアップデートが突然なくなる、ということは多々あります。プラグインを多用するようなサイトは、先々のことも考えて選定する必要がありますね。

サイトの将来設計も計画的に。

参考情報
WordPress and PHP 5.6(英語)

Photo
One fell asleep, and woke up nearly buried Photo – Visual Hunt

Image Downloaderで画像が1枚しかダウンロードできないエラーの対処法(Google Chrome拡張機能)

ルーチン業務の効率化を図っている最中のふもぱん先生(他称)です。

Image Downloader で画像が1枚しかダウンロードできない…

Webページ中の画像を一括ダウンロードできる Google Chrome の拡張機能「 Image Downloder 」を発見し、「(某仕事の効率化にかなり貢献する…!)」と心の中で狂喜乱舞しました。

が、実際に使ってみると、なんと1枚しか画像がダウンロードできないではありませんか。なんということでしょう…。ちなみにエラー音が連続して鳴り響きます。

エラーの原因は、Chromeのダウンロード設定

調べた結果、結論としては、Google Chrome で「ダウンロードファイルの保存場所を毎回確認する」という設定にしていたことがエラーの原因でした。

デフォルトでは、「ダウンロード」フォルダなど、既定のフォルダにすぐファイルがダウンロードされる設定(いちいち確認のダイアログが表示されない)になっているはずです。が、私は諸事情で毎回ダウンロード先を変更するように設定を変えていたため、Image Downloader がうまく動かない原因になってしまったようです。

この事象は少数派の人に該当するものと思いますが、Google で本件を検索しても、これは! という情報が出てこなかったため、ここに記録します。

解決方法

  1. 「Chrome」のメニューから「環境設定…」をクリック。
    Image-downloader-1

  2. 設定画面の一番下の方にある「詳細設定を表示…」をクリック。

Image-downloader-2

  1. 「ダウンロード」の項目にある「ダウンロード前に各ファイルの保存場所を確認する」のチェックを外すImage-downloader-3

以上で Image Downloader が複数の画像をダウンロードしてくれるようになるはずです。

いきなりエラーの解決法を主題としましたが、Image Downloader は画像サイズで絞り込みをしたり、リンクされている画像のみを絞り込んだりできるため、効率的です。Webページから画像を一括ダウンロードしたい、というニーズがある場合にはどうぞご参考に。

英語の義務教育に感謝

Image Downloader は外国の方が開発された拡張機能ですが、配布元のページで読んだ以下の文で解決にいたりました。

WARNING: If you haven’t set up a default download directory, you will have to manually choose the save location for each image, which might open a lot of popup windows. It is not recommended to attempt to download too many images at once without a default download directory.

日本語で解決方法を検索しても出てきませんでしたが、英語であっても、開発元の情報をちゃんと読めばよいのですね。これくらいの英文が一応読めるくらいになっている、そんな英語の義務教育に感謝する今日です。

英語学習は計画的に。

Image Downloader(Google Chrome拡張機能)

フリーランスWebディレクターによる「出張OJT業」

どちらかというと放置されて育った系のふもぱん先生(他称)です。(独学もある意味、セルフ放置)

「会社に相談できる先輩がいない」という話はときおり耳にしますが、今日は都内某所で OJT(On the Job Training)の出張版的な仕事をしてきました。主に HTML/CSS のコーディングレビューです。

デジハリ卒業生の方からいただいたリクエストですが、あまりないタイプの仕事で新鮮。オフィスの一角で自分の仕事はさせていただきつつ、適宜ご質問に回答する、というスタイルでした。

小さめの組織では、先輩社員によるフォローには限界があります。私が以前いた会社は、そこそこ人数はいましたが、空気的に聞けないとか、先輩が早々に卒業してしまったとか…聞くに聞けない環境には身に覚えがあります。

そこで必死になって成長する、というのもありますが、仕事である以上は納期があります。仕事が大きいほど、先の見えない不安と戦うのはつらいものです。

教えてもらうことができなくても、せめて一緒に考えてくれる仲間がいるのかどうか、も大きいはず。私もそういう意味で助けられたことは数知れず、です。

前職で一番つらいと思ったのは、連日休みがなく、相談も、話もできる人もおらず、日曜にフロアでポツンと一人深夜残業…月曜日を前にして光が見えない…といった状況でした。そして、銀座の街に繰り出しました(《一風堂》でラーメンを喰らう)。

Web制作系の会社は何かとハードになりがちですので、こういう形態の仕事もありなのかな、と感じつつ、今宵は《AFURI》でラーメンを食べて帰ったのでした。

いわば、職場の保健室的な何か。
いや、何か違うか。

自分がやった方が速い、という管理職失格系の反省は、今こそ果たすべきときなのかもしれません。今はどこにも所属してない私ですが。

深夜のラーメンは計画的に。

意外に簡単だった…タスクランナーGulpのインストール方法〜Mac編〜

概念を知って満足しちゃうのはやめようと思ったWebディレクターのふもぱん先生(他称)です。

昨年2015年12月26日(土)、CSS Nite「 Shift9:Webデザイン行く年来る年(CSS Nite LP43)」に参加してきました。「マークアップ」のセッション(「2015年のマークアップの話題を総まとめ」小山田晃浩さん / 益子貴寛さん / 久保知己さん)で取り上げられていたのがタスクランナーの「 Gulp 」。細かい定義はお調べいただくとして、要は「自動化ツール」のこと…というと乱暴でしょうか。

私もディレクターのはしくれですので、その存在やメリット、デメリットは概念的に知っていました。ただ、普段はディレクション中心のため、あまり切実に必要なものではありませんでした。「インストールなどの環境づくりが面倒」という風評もよく目にしていましたので、なかなか実践しようとは思わなかったのです。CSS Nite の懇親会でも、「同僚たちがなかなか導入しようとしない」という声が聞こえてきました。慣れた環境を変えるのは意外とパワーがいるのですよね

恐れるに足らなかった Gulp の環境づくり

今回、CSS Nite で Gulp のデモを拝見して、便利そうだな〜と改めて思い、お正月休みで時間があったため、環境づくりを実践。結果、そこまで大変なものでもないことがわかりました。

調べながらやれば難なくできましたが、私はデジハリで未経験の方にWeb制作系のレクチャーをする機会がある身分です。ここは説明が薄いとつまずいてしまうかも、と思うところが多少ありましたので、私が実際に行った手順をまとめます( Mac 編)。具体的には、「ターミナル」に慣れていないと「?」となってしまう可能性があるな、と思った点を少し細かく記載してあります。ターミナルの操作で立ち止まってしまった方の参考になれば幸いです。

Gulp があれば早く帰れる(比喩)

そもそも Gulp のメリットとは?

例えば、Web 制作において Sass( CSS の便利な書き方の一つ)を使って CSS を修正し、その表示をブラウザで確認する、というシーンがあるとします。この作業を分解すると、

  1. Sass のファイルを修正して保存する
  2. Sass のファイルを CSS にコンパイルする( .scss のファイルを .css に変換する)
  3. ブラウザを起動する
  4. ブラウザで HTML を再読み込みして表示を確認する

といった工程があります。ここでタスクランナー「 Gulp 」を使うと、「 1. Sass のファイルを修正して保存する」をしただけで、2. 〜 4. を自動でやってくれます。つまり Sass のファイルを保存すると、勝手にブラウザが立ち上がり、修正の反映が確認できるわけです。IT革命や…。

上記は地味な一例ですが、Web制作(特にコーディング/マークアップ)に携わる人なら何百回、何千回とやる作業ですので、ちりも積もれば山となるのです。自動化できる工程は、JavaScript ファイルの最適化や画像ファイルの圧縮、FTPへのアップなど、さまざまありますので、ご自身の作業工程でよくある内容を自動化すれば、きっと早く帰れるようになるでしょう(希望)。

では、先ほど例にあげた工程を例にとって、Gulp のインストールから実行までを体験してみましょう。ちなみに Gulp と類似のものに「 Grunt 」もありますが、こちらはしばらくメンテナンスがされていないようで、もはや Gulp が主流と考えてよい状況です。

目次

  1. Node.js のインストール
  2. npm の準備
  3. Gulp.js のインストール
  4. gulpfile.js の作成
  5. Sass を CSS に自動コンパイル
  6. ブラウザのリロードを自動化
  7. 終えるときは

1. Node.js のインストール

nodejs

まずは http://nodejs.org/ にアクセスし、Node.js をダウンロードします。2016/01/03 現在、「 v4.2.4 LTS 」と「 v5.3.0 Stable 」がありますが、「 v4.2.4 LTS 」の方を選択してください。

補足:CSS Nite でも解説されていましたが、v4系は2018年までアップデートが継続される予定ですが、v5系は2016年中に終了するとのことです。「 v4.2.4 LTS 」の「 LTS 」は、Long Term Support の略。

ダウンロードが完了したら、ファイルをダブルクリックしてインストールします( node-v4.2.4.pkg などのファイル名です)。

インストールが完了したら、「ターミナル」というアプリを起動します。Mac の場合、以下いずれかの方法で起動できます。

  • [control] キー + [space] キーの同時押しで「 Spotlight 検索」を立ち上げ、「ターミナル」と入力し、以下画像のものをクリック。
    terminal-app-spotlight
  • または、Finder で「アプリケーション」 → 「ユーティリティ」内にある「ターミナル.app」をダブルクリック。
    terminal-app-finder

以下のような画面が立ち上がります(見た目は環境によって違う場合があります)。

terminal-app

以下の文字列を半角英数字で入力し、[return/enter] キーを押します。

node -v

バージョン番号が表示されれば、Node.js のインストールは完了です。

2. npm の準備

「 npm(Node Packaged Modules)」という、Node.js のモジュール(パーツみたいなものでしょうか)を管理するツールを準備します。通常、Node.js をインストールすれば、一緒に入っていますので、ここで改めてインストールする必要はありません。

まずは今回の作業を行うディレクトリを好きなところに作成します。以下例では「書類」内に「gulptest」というディレクトリをつくりました(英数字のディレクトリ名にしましょう)。

folder-gulptest

ディレクトリを作成したら、「ターミナル」の画面に戻り、作成したディレクトリに移動します。以下の文字列を入力し、[return/enter] キーを押します。

cd /Users/fumopan/Documents/gulptest 

ターミナルに馴染みのない方は、この時点で「ん?」ということになるかもしれません。上記の「 cd 」は Change Directory の略で、ディレクトリーの移動を行うためのコマンドです。以降の「 /Users/fumopan/Documents/gulptest 」は移動先のパスを示していますが、これは私の場合の例ですので、みなさんの作業環境により変わります。ここがよくわからない…という場合は、以下の技で乗り切ってください。

terminal-cd

ターミナルで「 cd[半角スペース] 」と入力したら、Finder から作業用ディレクトリのアイコンをドラッグ&ドロップします。すると、パスが自動で入力されますので、その後、[return/enter] キーを押します。見た目があまり変化しませんが、これで作成したディレクトリに移動したことになります。

移動できたら、以下の文字列を入力し、[return/enter] キーを押します。

npm init

以下のような内容が表示されます。

$ npm init
This utility will walk you through creating a package.json file.
It only covers the most common items, and tries to guess sensible defaults.

See `npm help json` for definitive documentation on these fields
and exactly what they do.

Use `npm install <pkg> --save` afterwards to install a package and
save it as a dependency in the package.json file.

Press ^C at any time to quit.
name: (gulptest)

任意の内容を入力して、[return/enter] キーを押していきます。次々と入力をうながす行が表示されますが、今回はテストですので、特に何も入力せず、[return/enter] キーを連打していっても OK です。今回は以下のようにしました。

name: (gulptest) test
version: (1.0.0) 
description: Gulpテスト
entry point: (index.js) 
test command: 
git repository: 
keywords: 
author: 
license: (ISC) 
About to write to /Users/fumopan/Documents/gulptest/package.json:

{
  "name": "test",
  "version": "1.0.0",
  "description": "Gulpテスト",
  "main": "index.js",
  "scripts": {
    "test": "echo \"Error: no test specified\" && exit 1"
  },
  "author": "",
  "license": "ISC"
}

Is this ok? (yes) 

最後に「 Is this ok? (yes) 」などと表示されますが、ここでも [return/enter] キーを押します。すると、作業用ディレクトリの中に「 package.json 」というファイルが作成されます。

folder-gulptest-package-json

3. Gulp.js のインストール

さて、インストールの類はこれが最後。Gulp.js をインストールします。
ターミナルの画面を開き、以下の文字列を入力して [return/enter] キーを押します。

sudo npm install gulp -g

これでグローバルにインストールができました。次に、以下のコマンドでローカル(今回作業する場所)にインストールします。

npm install gulp --save-dev

ローカルにインストールするだけでも動くという話もありますが、ひとまずよくある手順ということでこのまま進みます。

4. gulpfile.js の作成

次は Gulp の設定です。

テキストエディター( Mac の標準なら「テキストエディット」で OK )を立ち上げ、以下の1行を入力します。

var gulp = require("gulp");

入力したら、「 gulpfile.js 」というファイル名で保存します。保存先は、package.json があるディレクトリです。

folder-gulptest-gulpfile-js

設定は以上で完了です。

5. Sass を CSS に自動コンパイル

ここからが自動化の設定です。Sass のファイルを CSS にコンパイルするためのプラグイン「 gulp-sass 」をインストールします。

ターミナルの画面で、以下の文字列を入力し、[return/enter] キーを押せばインストールできます。

npm install gulp-sass --save-dev

多少時間がかかることもありますが、しばし待ちましょう。

次に Sass のサンプルファイルを用意します。
作業用ディレクトリ内に「 sass 」というディレクトリを作成し、その中にテキストエディター等で「 style.scss 」というファイルを作成します。style.scss の中身は Sass なら何でも OK ですが、サンプルは以下です。

$width: 300px;
$color: red;
#maincontainer{
	width: $width;
	color: $color;
	background: #333;
}

CSS で変数が使えるのっていいですよね。

次に gulpfile.js に Sass を CSS にコンパイルするタスクを記述します。

var gulp = require("gulp");

var sass = require("gulp-sass");
 
gulp.task("sass", function () {
  gulp.src("./sass/**/*.scss") //入力元
    .pipe(sass().on("error", sass.logError))
    .pipe(gulp.dest("./css")); //出力先
});

1行目は既に書かれているはずですので、3〜9行目を追記します。追記後に保存したら、いよいよ Gulp を動かしてみましょう。ターミナルの画面を開き、以下の文字列を入力して [return/enter] キーを押します。

gulp sass

すると、なんということでしょう…作業用ディレクトリ内に、「 css 」というディレクトリと「 style.css 」というファイルがつくられています。

folder-gulptest-css

style.css の中身を見てみると、以下の通り Sass から CSS にコンパイルされています。

#maincontainer {
  width: 300px;
  color: red;
  background: #333; }

この例では Sass のコンパイルというプラグインを使いましたが、他のプラグインを活用すれば、他にもさまざまな作業を自動化できます。

6. ブラウザのリロードを自動化

さて、仕上げにブラウザ上での表示も自動化してみましょう。プラグイン「 browser-sync 」をインストールします。

ターミナルの画面で、以下の文字列を入力し、[return/enter] キーを押せばインストールできます。

npm install browser-sync --save-dev

次に HTML のサンプルファイルを用意します。
作業用ディレクトリ内に、テキストエディター等で「 index.html 」というファイルを作成します。

folder-gulptest-html

index.html の中身のサンプルは以下です。

<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<meta charset="UTF-8">
<title></title>
<link rel="stylesheet" href="css/style.css">
</head>
<body>
<div id="maincontainer">Gulpのテスト</div>
</body>
</html>

次に gulpfile.js を以下の通り変更します。

var gulp = require("gulp");

var sass = require("gulp-sass");
  
gulp.task("sass", function () {
  gulp.src("./sass/**/*.scss") //入力元
    .pipe(sass().on("error", sass.logError))
    .pipe(gulp.dest("./css")); //出力先
});

var browser = require("browser-sync");

gulp.task("server", function() {
  browser({
    server: {
      baseDir: "./"
    }
  });
});

gulp.task("sass", function () {
  gulp.src("./sass/**/*.scss")
    .pipe(sass().on("error", sass.logError))
    .pipe(gulp.dest("./css"))
    .pipe(browser.reload({stream:true}))
});

gulp.task("default",["server"], function() {
  gulp.watch("./sass/**/*.scss",["sass"]);
});

1〜9行目は既に書かれているはずですので、10行目以降を追加します。保存したらターミナルの画面を開き、以下の文字列を入力して [return/enter] キーを押します。

gulp

ブラウザが自動的に立ち上がり、HTML のページがブラウザに表示されたのではないでしょうか?

この状態で Sass のファイル( style.scss )に変更を加えて保存すると、ブラウザ上にも即座に反映されます。

7. 終えるときは

gulpfile.js 内の以下記述(最後の方に書かれているもの)により、ファイルの変更があると即座にタスクを実行する「監視」という状態になっています。

gulp.task("default",["server"], function() {
  gulp.watch("./sass/**/*.scss",["sass"]);
});

ターミナルも監視状態になっていますので、ターミナルを終了するときは、[control] + [c] で監視状態を解除してください。

まとめ

無事体験できましたでしょうか?
ターミナルの作業は馴染みがないとつまずくことがあるため、その点を少し細かく説明に入れてみました。

自動化のプラグインは無数に出ているようですので、「Gulp プラグイン XXX」などで検索して、必要なものを探してみましょう。以下のページにめぼしいものが一覧化されていましたので、ご参考に。

gulp.js その4 プラグイン一覧(Qiita)

その他、Gulp の導入については以下の記事がわかりやすく、参考になりました。

Gulp.js入門 – コーディングを10倍速くする環境を作る方法まとめ(LIG)
5分で導入! タスクランナーGulpでWeb制作を効率化しよう(ICS MEDIA)

後記

この記事をまとめるのに6時間くらいかかりました。嗚呼。

ブログを書くのって大変だなぁといつも思いますが、解説系の記事はキャプチャなども必要になってきて、さらに大変ですね。日頃から解説記事には大変助けられていますが、改めてそんな記事を提供してくれる神々に感謝の念を捧げたいと思う次第です。私も少なからず貢献できただろうか…。

学びの実践は計画的に。



プロセスの見える化と価値のプレゼンテーション(『Webデザイン行く年来る年』から)

世の中が休みっぽい雰囲気になると、自分も休んでいいよね…と思い、ようやくブログを書けるふもぱん先生(他称)です。

昨年2015年12月26日(土)、CSS Nite が主催する Web 系のイベント『Webデザイン行く年来る年』に参加してきました。13:30から20:00頃までの長丁場で、6つのセッション。これをひとつひとつまとめると、またブログに書かないまま終わってしまう…(間違いない)。

ので、もう1記事1テーマくらいに、断片的に書いていきます。

2015年総決算ゆえディレクター的にありがたいイベント

総評としては、「行ってよかった」でした。理由としては、講演内容のテーマが多彩だったことがあげられます。テーマは以下の6つがありました。

  1. 基調講演(「制作者はもっと盗むべき、たったひとつの理由」)
  2. マークアップ
  3. アクセシビリティ
  4. スマートデバイス
  5. ツール・フォント
  6. デザイントレンド

今年は Web 系のイベントにあまり参加していなかったこともあり、年末総決算的に幅広いテーマのお話を聴けたのはありがたかったです。普段はディレクションの仕事が中心のため、知識は幅広く知っておく必要があり、その意味でも◎でした。

今日は、中でも気になった内容をひとつ取り上げます。

デザインはブラックボックス

長谷川 恭久さん(基調講演)のお話に、「デザインはブラックボックスになっている」という一言がありました。五輪エンブレムでも選考プロセスが不透明である、という批判が一時期あったのを思い出します。

たしかに、普通の人にとってみれば、「デザイン(ビジュアルデザイン)」が生まれてくるプロセスは想像もつかない、というのが普通です。デザインをしたことがない人からすると、デザイナーの仕事は、「何か知らないけど、いい感じのデザインができてきた、すごい!」というイメージでしょう。

プロセスの見える化と価値のプレゼンテーション

ここで思ったのは、プロセスが見えないと、その価値が正しく評価されない、ということです。

私が以前勤めていたWeb制作会社では、制作単価を決めるために、クライアントに制作現場を見学してもらい、どんなプロセスを経て納品物をつくっているのか説明した、という話を聞いたことがあります(これは「価値のプレゼン」だな、と思いました)。

五輪エンブレムのデザインプロセスも、恐らく多くの人には想像できないものだったことでしょう。ゆえに、エンブレムの見た目の好き嫌いはさておき、そのデザインプロセスが正当に評価されたのか? デザインの背景にある考えが尊重されたのか? は疑問が残ります。ただ、広く一般の人には、そんなプロセスなどとうてい想像できないものだった、というのが現実でしょう。

私は Web 制作のディレクションが中心ですので、制作物というわかりやすいアウトプットがありません(自身の手でつくるというより、パートナーにつくっていただくことが多いため)。それだけに、ディレクターの価値って何なの? に対する、価値のプレゼンが今後必要だな…と考えさせられました(度々感じてはいますが)。

消費者視点と生産者視点

今回参加した「イベント」というものにも言えますが、イベントに参加するだけ(消費者視点)だと、イベントの大変さは見えてきません。イベントを主催する経験(生産者視点)があると、その大変さや苦労が見えてきます。

私は主催者側になることが定期的にありますが、参加するだけのときには見えていなかったことに多々気づくことがありました。例えば、純粋にイベントの場所をおさえるのって大変だなとか(収支や設備なども考慮しつつ)、ドタキャンにどう対応するかとか、精算はいつするのかとか、領収書は…とかとか。いくらでも出てきます。

サービスの価値を正しく評価するには、サービスを受け取る側(消費者)、提供する側(生産者)、二面からの理解が欠かせません。どちらも体験するのが一番早いですね。

パートナーになる/自分事化する

消費者が生産者について理解しているケースばかりではありません。Web 制作となると、クライアント(消費者)に制作経験がないことは多々あります。むしろ、自分ではできないから発注するのでしょう。ただ、そこで妥当な評価や価値を認めてもらうためには、やはり生産者からの「価値のプレゼン」が欠かせません。

逆に、生産者も、消費者のことを理解しなければなりませんね(二面からの理解)。双方から理解し合おうという関係づくりができれば、そこから生まれる成果物もよいものになっていきます。つまり「パートナーになる」ということです。この意識がないと、とりあえず言われたことをやればいい、という他人事の仕事になりがちです(自戒をこめて)。

自分は、クライアントのパートナーという関係で仕事ができているだろうか? その関係を築く努力ができているだろうか?

2016年、改めて意識したいポイントです。

消費と生産は計画的に。

「Shift9:Webデザイン行く年来る年(CSS Nite LP43)」(2015年12月26日開催)

コンペに落ちたけど、受注した話。

師走というこの魑魅魍魎の季節に、何ヶ月間も書いていない「ブログを書く」という選択をして、ちょっと後悔しているかもしれない私、ふもぱん先生(他称)です。

きっかけは、『Webディレクション Advent Calendar 2015』。最終日の25日目だけ、ぽっかりと穴が空いていたのです。

adventcalendar

これは…

ポチ。

ちょっと後悔しているかもしれません(2回目)。

無駄に長いWebとの付き合い

普段ろくにブログを書きませんが、Advent Calendar という形式上、普段接点のない方が読んでくださるかもしれません。ですので、簡単に私について書きます。

私は12歳のときに独学でWeb制作を始め、2005年に新卒で某Web制作会社に入社。そこで「Webディレクター」という肩書がはじめてつきました。その後、2012年まで7年弱勤め、数ヶ月の御ニート様生活を経て、現在はフリーランスのWebディレクターとして活動しています(もうすぐ丸3年目)。

今年最大の学び(直し)はコンセプトの重要性

私の2015年、「Webディレクション」という仕事にまつわることで パッ と思いつくこと。それは、「コンセプトが大事」ということです。

発端は、少しさかのぼって2014年の夏。複数社が参加するWebサイトリニューアルのコンペ案件でした。1週間ほどでデザインを含むリニューアルの提案をする、という内容です。

結果は、落選でした。

さて、時はすぎて翌年2015年の春。コンペのこともだいぶ忘れかけていたころ、突然、コンペのクライアントからご連絡をいただいたのです。

「リニューアルについて相談できませんか。」と。

提案から9ヶ月は経過していましたので、なぜ今?と、内心驚きました。理由は、前年のコンペで発注先として決まった会社とうまくいかない、とのこと(要約)。後日お話をうかがうと、私が提案書の中に入れていた「コンセプト」が印象的だった、とのこと。

連絡をくださった方はコンペの決裁権はお持ちではありませんでしたが、私の提案を評価してくださっていたようです。提案書をずっと保存し、事あるごとに参照してくださっていたとのことでした(なんとありがたい…)。そこでリニューアルが頓挫しそうになっていたこともあり、ご担当者の方が社内的にかけあって、私にご連絡をくださったのでした。

失注したと思っていた案件が、まさか9ヶ月もたってから仕事につながるとは…予想外でした。

意外と明確になっていないことが多いコンセプト

コンセプトづくりにあたっては、時間が限られていたこともあり、パンフレットとWebからできるだけ情報を集め、整理して組み立てました。あくまでも自分が考えるならこうだ、という仮案です。それでも今回のような結果が得られたあたりに、「コンセプト」の重要さを改めて実感した次第です。

クライアントによりますが、そもそもクライアント自身のコンセプトが明確になっていないことはよくあります。自分が自分のことを意外とわかっていないのと同様ですね。第三者視点でコンセプトを考え、捉えなおそうとすることは、それだけでも価値になります。

ディレクションはコンセプトありき

私がサイトのことを考えるとき、いつも頭の中にあるのが「3C」です。それっぽくしていますが、元ネタは “The Elements of User Experience” という資料にある図です。

3c

Creative(ビジュアルデザイン等)を考えるにも、Contents を考えるにも、その根底にある Concept が何なのか? が必要である、という考えです。当たり前と言えば当たり前ですが、ディレクションをするなら判断基準となる「軸(≒コンセプト)」が欠かせません。

コンセプトのコンセプトは「世界をよくする」こと

ただ、「コンセプト」という言葉の意味は、私自身、長年よく理解できていませんでした。

Nintendo の「Wii」をつくった玉樹真一郎さんの『コンセプトのつくりかた』(ダイヤモンド社)によれば、コンセプトとは、すなわち「世界をよくする」こと。言い換えれば、どんな課題に対して、どんな解決をもたらすのか? 自分たちの存在理由を表すもの、と言えましょうか。

ちなみに Wii のコンセプトは「お母さんが嫌いにならないゲーム」です。同書によれば、コンセプトは20文字以内である必要がある、とされていますが、抽象度を高く、かつ簡潔にまとめるのはなかなか困難です。それほど背景知識のないクライアントについて考えるならなおさらでしょう。

それでも、「こういうことか?」「こうなんじゃないか?」と多角的に考え、提案することには意味があります。提案した結果、なんか違うんだよね〜という評価を受けることも多いですが、そこには少なくともクライアントと同じ目線で考える態度が現れます。よく、クライアントから下請け扱いされてつらい、といった声も聞きますが、まずは自分からパートナーたるべき行動を示すことが先決です。

軽くドヤ感を漂わせる内容が含まれ恐縮ですが、今年、私にとってうまくいったことの代表例、ということでご容赦ください。少しでも今後のディレクション仕事のお役に立てれば幸いです。

人生またはWebディレクターとしてのコンセプトは?

ちなみに先ほどの「Wii」をつくった玉樹真一郎さんは、製品のコンセプトメイキングを突き詰めていく中で、「自分の人生のコンセプトとは何か?」という問いにいたり、結果 Nintendo を去られました。

さて、あなたの人生のコンセプトは何でしょうか?
または、Webディレクターとしてのコンセプトは?

この年末年始、改めて考えます。

人生プロジェクトのマネジメントは計画的に。

健康管理に気をつけよう
健康管理に気をつけよう
web-director-handsign
これを覚えておけば大丈夫です(棒)

ご参考)
[PDF] The Elements of User Experience
Webディレクション Advent Calendar 2015

NHKの名作『映像の世紀』で「歴史は繰り返す」を学ぶ夏

歴史は縄文時代からではなく、近代からさかのぼって教えるべきと思っているふもぱん先生(他称)です。

先日、終戦の日をむかえ、お盆も終わりました。季節的に過去の戦争の歴史を顧みるムードが漂い、そしていつしか薄れ、消えていきます。

戦争を疑似体験するための『映像の世紀』

歴史は勉強した方がいいと思うけど、何から入ったらいいのかわからない、という人も多いでしょうか。私もそのくちだったのですが、最近、中学生のころに観て、15年以上たった今も記憶にあるNHKスペシャル『映像の世紀』全11集をすべて見直しました。

もし観たことがない方がいらっしゃれば、おすすめしたい作品です。主に近代ですが、第一次大戦から第二次大戦が終わるころまでのアウトラインを貴重な映像とともにつかめます

私の祖父、曽祖父は共に戦争に行き、フィリピンやサイパンの沖で戦死していきましたが、戦後70年ともなると、実体験として戦争を語れる人は相当少なくなっています。この記事を読んでくださっている方も、きっと自身の体験として語れるという人はそういらっしゃらないでしょう。『映像の世紀』はむごい映像も入っていますが、戦争の悲惨さを知るうえでは欠かせない要素です。

戦争を自分事化する

本作品を見直していてまずハッとしたのは、

第一次世界大戦は、戦争を体験していない世代が楽観的に始め、結果4年間の泥沼にはまった。

という話でした。

「歴史は繰り返す」と言いますが、最近の安保法案の閣議決定のことも考えると、自分ごととして考えねば、と改めて思います。

映像には1923年の関東大震災についてふれるところもありますが、被災した人たちは犯罪に走ることもなく、配給の列をつくり、淡々と片づけをしていた…という外国人の回想が入ります。2011年の東日本大震災でも海外から同様の声があがっていましたが、国民性というのも大きくは変わらないのでしょうね。

「歴史を知る」以上の価値がある歴史の勉強

根深い民族対立や宗教戦争、各国の成り立ちなど、書き始めればきりがないくらい、さまざまな学びがあります。内容としては本当にアウトラインという感じですが、興味を持てる事柄が見つかれば、そこから掘り下げてより歴史を学んでいくきっかけにもなります

とはいえ全11集、計16時間くらいはあります。DVDも買うと7万円というなかなかのお値段。レンタル店やNHKオンデマンドなどでちょくちょく観るのがおすすめです。ちなみにヒストリーチャンネルでは9月12日(土)の夜からぶっ通しで再放送があるようです。

歴史(の一端)の全体像を知ることのみならず、読書や映画、美術展の鑑賞などにも役立ってきます。本の著者やアーティストの生きた時代はどんな時代だったのか? 国はどんな立場に置かれていたのか? などを少し知っているだけでも、インプットの質が上がります。

私はまだまだ勉強不足ですが、『映像の世紀』を見直してから、目に見えない部分の想像力が上がってきました。それがまた、歴史を知りたい、という気持ちの循環にもなるのが発見でした。最近は年代ものの映画を観たり、高校生の教科書的な歴史を学び直してみたりしています。

歴史の勉強はどこから入ったらいいかわからない、という方は『映像の世紀』をおためしあれ。歴史を学ぶうえでおすすめの映像や映画、本などありましたらぜひ教えてくださいっ。⇒ @fumopan

学び直しは計画的に。

以下は蛇足です。

今通っている「編集スパルタ塾」で「絶対観るべし」と言われた映画が『意志の勝利』。ナチス・ドイツのプロパガンダ映画ですが、恐ろしくクオリティが高く、その後の映画に大きな影響を与えたそうです。『映像の世紀』でも、やはりナチス・ドイツの内容は悲惨です。当時の人がどんな映像に影響を受けていたのか、俄然興味がわきます。

ナチスと言うと、以下の本も名著ですね。…と、どんどん広がってしまう。

メモ:大学の先輩から教えていただいたおすすめ本↓

学芸大学《マッターホーン》のモカソフトを食べなさい

生きる幸せは食べることにある、と考えるふもぱん先生(他称)です。このどうしようもない飽食に時代に生きられることをご先祖さまに感謝します。

私は感情表現が苦手なタイプですが、そんな私が「なんておいしいんだ」と切に思う代物に出会いましたので、謹んでここに報告いたします。

タイトルの通り、東急東横線 学芸大学駅より徒歩数分のところにある《MATTERHORN(マッターホーン)》の「モカソフト」がそれでございます。アイスとコーヒーがお好きでしたら、お早めにお召し上がりください。夏季限定ですので(630円)。

上品でほどよい風味のコーヒーアイス、モダンアートのごとく突き刺さったコーン、溶けたアイスがからみつくダメ押しのコーヒーゼリー…。複数のレイヤーで食感が楽しめるのも◎。

至福です。

おいしいものは、得てしてたらふく食べたい衝動に駆られますが、そこは創業60年以上をほこる洋菓子店。多すぎず、少なすぎず、何かを知り尽くしたかのような、大人のボリューム感です。あ、もうちょっと…食べたい…かも…そんないじらしい量です(当社比)。

《マッターホーン》は、バームクーヘンも有名で、一店舗主義のためか予約がいつも満杯のようです。店舗に行くと、カットしたものが買えますので、貪欲な方はこちらも連れて帰るといいかもしれません。

「モカアイス」は、今年(2015年)は8月1日から始まりましたが、何日まで提供されるのかは明示されていません。気になる方はぜひお早めに。提供時間は11:00〜18:00で、数に限りがございますよ。

食い倒れは計画的に。

MATTERHORN マッターホーン
〒152-0004 東京都目黒区鷹番3-5-1
火曜日(祝日の場合は営業)
http://matterhorn-tokyo.com/

ご参考:マッターホーンでアップされているInstagramの写真たち

その他にもアイスの食べ過ぎでお腹をこわしたい方は、以下の雑誌が参考になります。